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「加藤学 展」

KATO Gaku Solo Exhibition

  

会期 2024年 7月9日(火)ー8月3日(土) 

休廊日 日月祝 

営業時間 火ー金 12:00ー18:00 土曜日12:00ー16:00

 

 

《行々子》 2024年 Acrylic on canvas 63.0x79.5cm 

 +Y Galleryでは7月9日より「加藤学展」を開催いたします。加藤学は1961年福島県生まれ。多摩美術大学絵画科を卒業し、主に水溶性の画材を用いて風景を主題とする絵画を制作してまいりました。西洋絵画中心の美術教育から、次第に東洋絵画の空間性に関心を持った加藤は、90年代には単色で風景の軸を描いたシリーズや鳥瞰的な視点を持って空間を描いたシリーズ、VOCA展(1996年)、インドトリエンナーレ展(1997年)などに出品し評価を得ました。また2002年には文化庁在外研究員として1年間中国に滞在し、山水画の長い歴史や精神、描かれた風景に触れる経験をいたしました。

 

 単色の絵画から続く課題であった「風景」という主題は、近作においても健在しており、近年は色と図像への関心から、複数の色によって描かれるようになりました。その空間性はより色と形の要素が加わり味わい深いものとなっています。絵の中で形は現れようとする直前にとどめられており、一見すると複数の色による抽象画にみえなくもないのですが、絵の前で佇んでいますと風景はさまざまな表情を見せ始めます。

 

 加藤の制作は自然を感受することから始まります。谷や森の径にそって移動し、時にその中で佇み鳥の声やせせらぎの音に耳をすまし、五感を通して自然を見つめます。その光景は膨大なスケッチに留められ、絵を描く際には複合的な記憶を呼び起こす契機とされます。自然の中の一瞬の光景、それらを受け止める山河の泰然とした風景、時に残酷なまでに荒ぶる姿。東西の画家や詩人は自然に心を寄せその中にいる自身と内面を客体化しことばや絵に昇華し作品を生み出してきました。加藤学は長きにわたる書画、絵画のあり方に接続しながら、現代日本に生きるものとして西洋的な影響も否定せず、「風景」を通してその奥に哲学的イデアを追い続けています。

 

 本展ではタブロー8点、ドローイング15点、を展示。(ストックとして、スケッチや初期、近作のタブローやドローイングなど、これまでの流れをご覧いただける作品も用意しています。)どうぞご高覧くださいませ。

 

 +Y Gallery


artist statement

 

「制作の谷間から」

 

空白とは何だろう。実景(前景)の中に背景がなだれ込み空白となる。空白は作用する。それは無音の揺れ(時間差)である。無音に揺れ、  実景(前景)の留まらなさを絶えず促す。背景は決定的には捉え難く想像を超えている。否、無限に想像出来るものとしても考えられる。双方共に本質に於いて同値だ。此処に空白と背景の同一性を直感する。見ることの出来ない、 画かれることの無い背景という存在を空白が示している。

前景に顕れ出た空白。それは想像の限りを包含した背景空間である。超微にして超巨、時にそのどちらでもない。その空白に佇んではいけない。踏み込めば姿を消しゆく。

どうだろう。自身は背景の中に在るではないか。点在する背景ごとに自身の居る風景が在る。

制作の過程で流れというか風位のようなものを感じる。その風位に乗って空白=背景は点置される。その位置は、呼吸という自らの確実な実感を有しながら布置されてゆく。

画布に置かれた絵の具。風景を求める思考と行為。描かずに置く。筆の接地によって置かれた絵の具。筆を引きずり弾ませ奏でて線と成る。風起こり、風雲急を告げる。その連続によって定め置かれた成りゆきの合間。成りゆきと成りゆきの谷間から再び空白を観る。優劣を取り払った展(ひろがり)。前景と背景の総観。空白と此の身が一体となってゆく。  

                                          2024年5月 加藤 学

 


加藤 学  Kato  Gaku 

1961  福島県に生まれる

1988 多摩美術大学美術学部絵画科卒業

2002~2003 文化庁在外研修員として北京滞在  

 

出品歴 

【個展】

1988 三木ギャラリー

    西瓜糖/東京 (92、93)

1990 藍画廊/東京 (92)

1991 なびす画廊/東京(93、94、96、98、2000) 

1992 胡椒亭/東京

1995 ギャラリー16/京都

1996 ギャラリエ アンドウ/東京 (98、2000、2001、2003)  

2004 Gallery Terashita /東京 (2005、2006、2008, 2009)

2011 I Gallery DC /山梨  (2013 2020)

2016 Gallery AXIS 6917/福井 

2023 藍画廊/東京

 

【出品歴 グループ展】

1993 「なんなら反ロダン主義」ギャラリー16/京都

    「第12回平行芸術展 全面展開期の絵画Ⅱ」小原流会館/東京

1995 「ぷろみしんぐなびす」なびす画廊/東京

1996 「VOCA展 現代美術の展望」上野の森美術館/東京

    「September Site」ガレリア ラセン/東京

1997  「Each Artist、Each moment ‘97」ギャラリーGAN/東京

   「京橋界隈‘97」なびす画廊/東京

   「第9回インドトリエンナーレ」(Lalit Kala National Academy of Art/ニューデリー)

1998   「L’art Dans Le Monde “Gazett des BeauxArts」PASSAGE de RETZ/パリ   

    「川村龍俊コレクション展・ジョン・ケージ(John Milton Cage Jr)から広がった美の世界」

     東京純心女子大学・純心ギャラリー/東京

    「福島の新世代98」福島県立美術館/福島

1999   「12月のおくりもの」なびす画廊/東京   

    「前奏曲」ギャラリー・ラ・フェニーチェ/大阪

2001   「GALLERIA RASEN 2001」ガレリア ラセン/東京 

    「2月のおくりもの」なびす画廊/東京  

    「美と術」藍画廊/東京

2003  「消残 Fade in Fade out」 日本国駐華大使館文化中心/北京 

    「3人展」Studio Liu/北京

2005 「2月のおくりもの」なびす画廊/東京 

    「Art  in CASO 2005 」CASO/大阪

2007 「DOMANI・明日展2007<文化庁芸術家在外研修の成果>」損保ジャパン東郷青児美術館/東京

    「De Mystica-召命」ギャラリーアートポイント/東京

2009 「De Mystica-第二回展アート全盛期における美術」なびす画廊/東京 

    「二人展/今澤正・加藤学」Gallery Terashita/東京

2010 「開館25周年収蔵展」福島県立美術館/福島

2012 「アンドウ セッション1.2」ギャラリエアンドウ/東京 

2016  「二人展/加藤学×河田正樹vol.1」藍画廊/東京

2017 「2017年度第Ⅱ期常設展/抽象絵画・版画」福島県立美術館/福島

2017 「なびす画廊最期の10日間」なびす画廊/東京 

2018  「二人展/加藤学×河田正樹vol.2」藍画廊/東京

2019 「13人の油絵」 +Y Gallery/大阪

    「ART in PARK HOTEL TOKYO 2019 Contemporary Art Fair」+Y Galleryブースより/東京

2020 「象、撫でる?」-全体を把握せずに物語を書き継ぐ試み/黒須信雄企画/足利市立美術館特別展示室/栃木

2023 「アンドウ セッション14」ギャラリエアンドウ/東京

2024  「紙の上の思考ⅨThoughts through Drawing-record」Gallery惺satoru/東京

 

【参考文献】

1993 『美術の窓』(生活の友社)2月号p39/天野一夫

    『毎日新聞』  文化 批評と表現 美術・平行芸術展「もどかしさの中の可能性」(7月5日)/三田晴夫

    『第12回平行芸術展 全面展開期の絵画Ⅱカタログ』イメージ 風を告げるもの/峯村敏明

1994 『現代詩手帖』「横断する速度としての…」3月号p168/田野倉康一

1995 『BOOTLEG』vol.2 加藤学(画家)インタビュー p53~55

1996 『武蔵野美術』(武蔵野美術大学出版)No.99〈日本画再見の中で〉p38~45/天野一夫

    『毎日新聞』  フレッシュ「風景の“気配”描く画家」 (3月22日)/三田晴夫

    『日経アート』(日経BP社)21世紀作家図鑑奇跡のようにうち震える光彩 p80~81/天野一夫

    『美術手帖』(美術出版社)Reviews 6月号p198/森司

1997 『第9回インドトリエンナーレ カタログ 』自己形成する生きたモールド/峯村敏明               

1998 『美術手帖』(美術出版社)Reviews 4月号p184~185/天野一夫

    『エル・アール』vol.6(リマーク株式会社)「アーティスト・インタビュー」p58~59             

    『BeauxArts』No.168  l’art  dance le monde tendances critiques98 p66~67/Taisuke Hirabayashi

2000 『福島民報』 西洋の技法で 東洋的世界/(2月13日) /荒木英幸

2001 『ギャラリエアンドウ個展』紹介文/鈴木禎宏

2004 『美術手帳』(美術出版社)Reviews 2月号p191.194/土屋誠一

2004 『美術手帳』(美術出版社)ホルベイン画家たちの美術史9月号p113~136/鷹見明彦

    『アートトップ』(芸術新聞社)vol 199  Art  Top Critical  Wards /野地耕一郎

2005 『美術の窓』(生活の友社)4月号p58 

2007 『東京新聞』 Domani・明日 展2007 期待したい日本美術の活力 (1月20日)/中村隆夫

2008 『芸術新潮』(新潮社)ムーンライト山水 3月号p137

2017 『読売新聞』なびす画廊最期の10日間(7月22日)/森田睦 

2020 『山梨日日新聞』風景五感で捉えた抽象画(11月4日)/山本久美子

2023 『Mercur des Arts』三つ目の日記(2023年1月)言水ヘリオ

 

【収蔵】

   福島県立美術館  

   東京都府中市 

   ソフトマシン美術館/香川 

   MTMコレクション 


ご注意 ※本展の作品撮影は不可とさせていただきます。