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「東征伝」北辻良央 個展

 

2019年 5月8日(水)ー6月8日(土)

水ー土 12ー18時 日曜休み 

※月火は予約制(前週の金曜までにご連絡ください)

  

 

 +Y Gallery(プラスワイギャラリー)では2019年5月8日(水))より、「北辻良央個展ー東征伝」を開催いたします。「東征シリーズ」は20世紀末から始まったヤマトタケルの神話を下敷きにしたシリーズです。北辻の生まれた羽曳野市は古来からの神話の土地であります。朝夕眺める風景の中に物語が重層的に垣間見える中に暮らし、神話は自然と作者の中に息づいているように思います。ポストもの派として知られる北辻(1948-)は、70年代はプラクティスを経た概念的制作で知られ、80年代は詩的、物語的オブジェ彫刻を展開させます。この東征シリーズは、水彩アクリル(2003年)や油彩新作など様々な平面メディアで展開されています。特に油彩の作品群はまとめて展示する機会はこれまでなく、初めての試みになります。ぜひご高欄くださいませ。

 

 

 

Artist's statement

 

反復と差異

 

 生国は河内(羽曳野)にあり、人生の大半は生家で暮らし、東方に二上山を望む。人並みに四十歳前後から生国の地勢や歴史などに気が向くようになる。

 朝方、制作を終えアトリエから帰宅途中、二上山が朝焼けに染まっている光景を何度か見てきた。私は家から東方に朝焼けの二上山を見ているが、古代のある物語では夕焼けに染まる二上山であり、西方浄土の方向にある。日常何気なく見ている二上山が、歴史上に、また文学に表れてくる二上山とが、いわゆる虚実皮膜の関係として、私にとって特別の存在として意識されるようになった。

 そうして1998年末から99年初にかけ、アートギャラリー・ラ フェニーチェにて"La Fenice nella Fenice"展が企画され、地上から地下二階までの空間に随所作品を設置し、堂内巡りのごとくギャラリーを上階から地階へと下降し、そして地階から上階へと上昇していく構成とし、胎内回帰の構造を作った。その時、作品の展示に寄り添うように小冊子が出版された。タイトル「二上山」は虚実皮膜の中にあり、胎内回帰であるような関係を「古事記」の景行記にある倭武命の物語をテーマに制作された。その後、倭武命の「東征」にまつわる作品(彫刻、オブジェ、ドローイングなど)を何点か間欠的に制作してきた。2003年「東征」を挿し絵風に物語の流れ(時間)に沿って描いた最初の作品は、紙に水彩で描いたものであった。その後十五年が経ち、制作は様々なメディアを駆使しつつも、油絵は未だ描いたことがなかった。油絵の具に親しむべく想いはあるにしろ、何を描くか思案の中にあった。そんな時、耳元で囁く声がして、水彩画の「東征」をそっくり油絵にしてみたらどうだろうかと。

 「東征」の油彩画は、縦横の比率や絵柄や色彩を忠実に水彩画より大判のキャンバスに油絵の具で描いた。それらはあくまで眼で見比べながら手に筆を持って描き、あるものは別色に変化しているものもあって、決して忠実に再現されたものではない。描いている途中に七十年代初めに反復・差異の原理で、如何に「作品」というものが成立しうるのかと、ひたすらプラクティスを重ねていたことを思いおこした。原理的な反復・差異から物質の変容によるイメージの反復・差異へと、世紀末の胎内回帰からの再生を経て、今「東征」は油絵というメディアを得て反復された。一枚づつの挿し絵が連続して時間の流れを作り、水彩画の連作は絵巻物として機能し、油絵の連作として反復され、そして油絵の具の表情は新たな情緒と時間体験をもたらしてくれる。

 再び二上山に戻ろう。飛鳥時代の天皇たちの葬送の地(陵)は、二上山を越えた河内(太子)の山裾の尾根筋に点在している。また、より時代を遡れば河内の平野にも点在している。その一つに倭武命が白鳥となって最後に休んだ地とされる白鳥陵がある。歴史は史実から遠のきながら虚実皮膜の間の真実を物語として反復されていく。

 素材技法における油絵というメディアは、私にとってまだ端緒に付いたばかり、新しい作品世界への導きとして、今までにない反復・差異の原理を引き寄せる霊媒となるだろう。

(令和元年5月吉日)

 

北辻良央

 

 

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+Y Gallery_2019年5月_北辻良央個展「東征伝」ステートメント
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©️+Y Gallery,courtesy of +Y Gallery
「東征・片栗の野原の誓い(1)」2019年 北辻良央 oil on canvas 53.0x45.5cm ©️+Y Gallery,courtesy of +Y Gallery

<予告>2019年秋、北辻良央の80年代作品を紹介する展覧会を予定しております。